畸形魚のダンス

「畸形魚のダンス」

 ほ場整備(注2)をして一番気が楽になったのは、田んぼが広くなって効率が良くなったのはもちろんですが、田んぼへの水かけが、以前より神経を使わなくても良くなったという点です。
 しかし、子供の頃夢中になった雑魚しめは出来なくなりました。もちろんコンクリート水路にメダカはいなくなりました。農民もまた、いなくなりつつあります──。「夢の農機具」をいっぱいかかえたまま。

阿部利勝 (Abe Toshikatsu)

1957 年余目町生まれ。
高校卒業後、家業である稲作に従事。
1993 年大蔵村在住の現代舞踊家、森繁哉に師事。森繁哉舞踏作品「原っぱのダンス」「銀河鉄道の夜」「森の思想」「草の少年」「石の力」「星と闇の祭り」等に出演。1996 年森繁哉作・演出による「利勝千本桜」にてソロデビュー。
以後、合鴨農法を行いつつ、稲作ダンスシリーズ「種」「苗」「青田」「出穂」「としかつ父ちゃんの鴨」を発表。1998年東北の舞踏家としてパーフェクトTV放映「身体の青春」及び秋田日本文化デザイン会議に、森繁哉、福士正一とともに出演。
1999 年稲作ダンス集大成としてソロリサイタル開催。
農機具ダンスシリーズとして、自作の詩とセットで「田植機」「トラクター」「草刈り機」「コンバイン」「軽トラック」を踊る。「勃起不全治療薬狂詩曲」(バイアグララプソディ)、「畸形魚のダンス」等の時事ネタダンスを織りまぜつつ、現在は農薬ダンスシリーズに取り組む。また、演劇集団「響」にて台本を担当。
踊る産直農民舞踏家。(99 年01年、詩のボクシング山形県大会準優勝。同第一回全国大会及び選抜式全国大会に出場)

注2)ほ場整備とは、国の補助事業で一枚の田んぼを広く区画整備すること。例・10アールから30アール最近は1.2ヘクタールへ